2008年07月23日

たった今、今が過ぎていった

川辺に立って

水の行く末を見つめていた

岩に叩きつけられた水音が

鼓膜を震わせ

まるで 流れの中に身を晒しているような

不思議な心地良さを僕は感じていた



透き通るほど 澄んだ水の流れ

打ち付けた水が反射して

頬を濡らす

どこかで 舞い落ちたのだろう

一枚の葉が

不意に音もなく

川の上流から流れてくるのが見えた

葉は一定のスピードで

ユラユラ揺れながら

流れに沿って 進む




葉は目前を通過していく

一秒か二秒か

あるいは一瞬だったのかもしれない

葉は僕の前をフラリと抜けて

欅の向こうに消えた



水の流れに淀みはない

そして 山脈の斜面を叩く

水の唸りは

一定のリズムを刻む




不意に

今 通り過ぎた葉が

どこかで忘れてきた

大切なものだったような気がしたけれど

喉元まで出かけた記憶は

川辺の風に

吹かれて消えた



また 一枚の葉が

ひらりと水面に舞い落ちる

淀みのない流れが

それをさらっていく
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2008年07月16日

あの虫を好むし

お月さまに

溶けそうなほど

蒸し暑い夜

風に乗り遅れた雲が

のろのろと

濁ったような空を飛んでいく



聴こえているか?

月明かりが映す雲の影に紛れて

虫たちは

かたくなに唄い続けているよ

ジージー

虫が唄うことに理由はなく

ジージー

自らの意思で 虫は唄う




"誰に強いられたわけではない"




その小さな体を震わせ

今 こうして生きていることの証を

ただ 叫ぶ

それが彼らの生き様

理屈を超えた

生命の荒々しさに

口を紡いだ






人もあの虫たちと共に

唄っていた時代があったという

それは人が獣だったころ

邪推も意図も 何もなく

ただ 魂のままに叫んでいた

"生きること"それ自体を

ただ 純粋に愛していた




そして 現在




夏の夜に響く虫の声を

苦々しく聴いている

ジージー

ジージー

眠れぬ暑さに

もう何度目ともわからぬ

寝返りを打つ
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2008年07月09日

音鳴ハート

誰にも伝わらないという

想いがあるからこそ

声を出す

腹の底から息を吸い込み

あらん限りの声で叫ぶ


木々の葉をシンバルにして

ヒナ鳥のハミングに合わせて

リズムを刻む大地のうねり

そして 山の向こうからは

真夏の太陽があなたを眩しく照らす


さあ 生まれた日の純粋さで

舞台に立とう

醒めない夢を持ち寄り

思い思いの音に乗せて

気ままなメロディを奏でよう


歓喜の唄が

誰かの胸に届くころ

地球を駆ける音楽は

大気を突き抜け

遠くの宇宙に響きわたる
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2008年07月08日

灰色の雨

ぶあつい雲の真ん中で

凍える声で歌う神様が

灰色の雨を降らせている


人々は真っ赤な雨傘を

その手に掴み

拭っても

拭っても

零れ落ちる雨に打たれている



大きな傘で

視界を閉ざしながら

その身を固め

安息の暮らしを求め

赤の群衆は去っていく


いつしか赤い傘は

血液のように溶けて

灰色の雨と混ざり合う

濁った赤で身を染めた人々は

それぞれの場所へ帰っていく


拭っても

拭っても

冷たく撫でるのは

灰色の雨だった
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2008年06月30日

朝を駆ける

夜中まで降り続いた雨がやみ

明け方の霧となって

誰もいない街を包む

山の向こうからは

太陽が静かにのぼり

街の輪郭をなぞるようにして

太陽は陰をつくる



それはありふれた朝

誰にでも平等な朝だ



光と陰が隔てたコントラストに

埋もれた猫にも

同じように朝は訪れる

誰かを待つように

草むらの隅で見つめていた

瞳は何を捉えていたのか?




朝は刻々と迫る



闇に慣れた瞳は

少しだけ眩しそうに

この朝を捉え

光に彩られた真っ白な街を

猫は駆け出した

嬉々として猫が駆けた朝は

ひとすじの光のように

凛として

ありふれた景色に

希望の華は咲く




長い夜が終わり

ただ 日が昇る



誰もいない

朝の風景に

男は静かな始まりを見ていた

猫が駆けた軌跡をなぞるように

男の瞳からは涙がこぼれた
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2008年06月27日

朝をすてる

過去を悔やむことを良しとして

男は朝をすてた

何も始まらない闇夜に

埋もれて

男は朝をすてた


夜がきて

ただ 朝日が昇る



すててしまった朝の重さに

男は押し潰されてしまったのではないかと

女は心を痛めたが

闇夜に消えた男は

ついぞ戻らなかった
タグ:詩作
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2008年05月30日

与えられることに慣れすぎて

今さらのことだと思いながら、こうして筆を執っている。
一ヶ月前くらいに、ある映画を観た。
『フィクサー』という、事件屋の物語。
事件屋とはすなわち、企業の不祥事をもみ消したり、
表沙汰にできないもめ事を、秘密裏に処理する人たちのことである。


予告編を観た限りでは、手に汗をにぎるサスペンス映画という印象だった。
もちろん、僕もそういうものを期待していたし、奇想天外な展開になるのだろうと予想していた。


たしかに話の展開は謎めいていて、引き込まれる要素はたくさんあった。
だが、物語が進むにつれて、自分が予想していた映画とは異なっていることに気がついた。
『事件屋』という職業は、あくまで主人公の心情を描くための道具に過ぎない。
この映画が伝えたかったのは、大企業の裏側だとか、闇社会で活躍する事件屋の姿でもない。

等身大の男の姿。

大きな力に流されながら、男が自尊心を取り戻していく過程であり、闘いの記録でもある。
原題は『Michael Clayton』。
主人公の名前が、そのままタイトルとして使われている。



そんなことに気づいたのは、映画がすべて終わった後だった。
配給会社の売り込み方に文句のひとつも言いたくなったが、
ヒットしなければならないという映画に課せられた宿命も感じられた。

”闇社会で暗躍する事件屋のサスペンス映画”

宣伝文句に騙された形になったが、ここはひとつ良しとする。


機会があれば、もう一度じっくりと鑑賞したい。
できることなら先入観を捨て、ニュートラルな気持ちで。
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2008年05月18日

白い花

いつも車を停めていた場所に

小さな楽園があった

何もないモノクロの荒地に

色をそえる確かな命

半径20mの楽園は

誰にも気づかれないまま

ひっそりと呼吸を続けている



灰色の絨毯の上で

頭ひとつ飛び出した

真っ白な花

名前は知らない

愛する人もいない

それでも

砂利をかき分け

空に向かい 懸命に咲いている



ただ まっすぐに

夕暮れの太陽に向かって

上へ

上へ



雨風が来ても

地に伏すことはなく

その果てでは

真夏の空が

君を待ちわびている
タグ:夏の詩
posted by Dreamin' at 23:50| Comment(2) | TrackBack(0) | 詩作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月11日

おいしい珈琲の作り方

苦々しいことばかりの世の中だから

小さな喜び

小さな笑い

ささやかな幸せ 集めて

カップに注ぐ




ココロが痛んだ

苦い記憶も

欠かすことができない"エッセンス"


苦味の後に広がる

微かな甘味は

きっと あなたを輝かせてくれる



どこにでも あるはず

小さな幸せ

スプーンに集めて

おいしい珈琲を

今日の始まりに注ぎます
タグ:朝の詩
posted by Dreamin' at 23:41| Comment(2) | TrackBack(0) | 詩作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月22日

春になれば

春になれば

焼けつくような夏のアスファルトを

恋しく想い


夏になれば

物言わぬ秋の寂しさを

恋しく想い


秋になれば

彼方に浮かぶ冬の雪山を

恋しく想い


冬になれば

色づき始めた春の大地を

恋しく想う


晴れた日には

大地を潤す雨を

恋しく想い


雨の日には

あの大きな雲に隠れた太陽を

恋しく想い


大人になれば

幼い日のまっすぐな情熱を

恋しく想い


人は

大空を舞う"自由の鳥"を

恋しく想う



私の中で 根をおろした

欲よ 妬みよ 悲しみよ

暖かな春の日差しに

せめては枯れぬ 花となれ



明日には

ありのままの自分を

愛したい
タグ:詩作
posted by Dreamin' at 19:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 詩作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする